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 雪が降り積もっていた。
 昔見ていた景色とは、まるで違う風景。それは時が経ったからなのか、それとも自分の心が変化したからなのか。
 初めてこの景色を綺麗だと感じたのは、ほんの数年前のこと。
 けれど今は、もうずいぶん遠い昔の記憶のように思える。

『忍』

 白く輝く雪が美しくて。目の前にいる恋人が世界の全てだった、あの頃。
 あれから、何度も、何度も、離そうとしては離せなかった絆。
 それなのに、今隣にいるのは、全く別の──。


「先輩、大丈夫ですか?」
 一泊予定の旅館。浴衣姿で窓の外に広がる雪景色を眺めながら郷愁に浸っていた忍は、不意に声をかけられハッと目を開いた。
「……何がだ?」
「緊張、してるんじゃないかなって」
 なんの疑いもなく純粋に労わりの目だけを向けてくる蓮川を前に、忍は緩やかに微笑んだ。同時に酷い罪悪感に苛まれる。
 決して、思い出したくて思い出していたわけじゃない。心の内で言い訳しながら、言い訳している自分にまたチクリと胸が痛んだ。
「そうだな。……少しは」
 数年ぶりにかけた電話の向こうから聞こえた母の声。すぐに切られるかと思っていたけれど、母の声は酷く落ち着いたもので、難なく会うことを了承してくれた。
 もう二度と会うことはないだろうと思っていた母との再会。いくら情など微塵もなかった他人同然の家族とはいえ、今になって想うことがあまりにも多く。けれど何をどう伝えれば良いのかも解らないまま故郷の地を踏んでいる今、一人ではない事に救われている。
「あの、おれ、どうすれば……っ。やっぱり一緒に行った方が……っ!」
「おまえがついてても話がややこしくなるだけだ」
 心配のあまり焦る蓮川を、忍はきっぱりと突き放した。蓮川が「う」と口篭る。
「きちんと話をして和解が出来たら、おまえにも会って欲しいと思ってる。だから、もう少し待っててくれ」
「……解りました。なんか……おれ、不甲斐なくて……すみません……」
 心底自分を情けないと思っている様子の蓮川に、忍は心の内で苦笑した。
 別に頼りないから頼らないというわけではなく、いきなり以前とは別の男を紹介される母の気持ちを考え、まずは母親との和解を優先しただけなのだが。とはいえ、「この蓮川」にそこまで解れと言っても無茶な話だ。
 忍は蓮川の額にそっと唇を寄せた。「わ」と顔を真っ赤にする蓮川を目前にしたら、心は酷く落ち着いた。
「だったら、こっちで満足させてくれ」
 今は、母のことも、過ぎ去った思い出も、何もかも忘れて、おまえだけを感じていたい。
 そう心の内で呟く忍に、蓮川は相変わらず顔を真っ赤にしたまま、そっと唇に唇を寄せた。
 
 長い口づけの後、忍は浴衣の隙間から覗く蓮川の鎖骨に唇を寄せる。
 吸い付いて離すと、赤い跡がうっすらと浮かび上がった。
「先輩……跡つけるのは、出来ればもっと見えないとこに……」
 蓮川が困った声で言う。忍は目を細め怪しげな笑みを浮かべた。
「誰かに見られて困る理由があるのか?」
「そーいう意味じゃなくて、普通に困りますってば……!」
「俺は何も困らない」
 むしろ、安心なくらいだ。忍がそう訴えると、蓮川は眉を下げて息を吐いた。
「ほんとに勝手なんだから……」
 仕方ない人ですねと、蓮川が諦めた様子で言ったかと思うと、突然に強い力で引き寄せられ、忍は目を見張った。
 唇が塞がれる。舌が咥内を蹂躙し、その激しさに胸が高鳴る。忍は自ら足を開き、浴衣の隙間から潜り込んでくる蓮川の手を受け入れた。ペニスに絡まってくる指の愛撫に身を捩らせる。胸元に何度も蓮川の熱い息を感じる。跡をつけたがっているのは互いに一緒なのに、いつでも見えない場所ばかりに印を残す蓮川は、やはり臆病で頼りなくて、残酷なまでに優しい。忍はいつでも、望んでいるのに。気遣いなんか要らない。理性など全てかなぐり捨てて、ただ求めてくることだけを。
「あ……ぁ、そこ……、や……っ」
 太股を執拗に舐められ、忍は身悶えた。太股に、足の付け根に、何度も吸い付き跡を残しては、一番触れて欲しいところに触れてはもらえない。焦れた忍は、蓮川の頭を掴み舐めるのを中断させた。
「も……しつこい……っ」
「……でも、気持ち良さそうなので」
「……ん……っ」
 再度足の付け根に舌を這わされ、忍はビクビクと身体を震わせた。
「や……だ……っ、そこじゃ……な……っ」
 絶対わざとだと確信した忍は、身を捩りもどかしい愛撫から逃れる。すると自分でももう限界まで膨れ上がっていると解るペニスの先を、ちょんと指で弄られ、痺れるような感覚にぎゅっと目を閉じた。
「ここ……ですか? 凄いですね、ちょっと触っただけでイッちゃいそうですよ?」
「ん……んぅ……っ」
 今度はクリクリと親指で撫でられる。そのたび忍のペニスがビクビクと震え、先端から液が滲んだ。
 達したくてたまらなくなり、忍は涙を浮かべた瞳を蓮川に向けた。
 蓮川が切なげに目を細める。忍の首の下に手を回し抱き寄せると、空いたもう片方の手でペニスをぎゅっと握り締めた。忍の瞳がますます潤み、頬を赤く染め、苦しげに息を吐く。
「そういう顏……もう絶対に、他の誰にも見せないで下さいね……?」
「……ん……っ……」
 唇を塞がれ、激しい口付けと共にペニスを扱かれる。声を出すこともままならず、息苦しさの内に絶頂に導かれる。
 好きだと、何度も叫んだ。
 だからもっと、強く激しく奪い去って欲しい。
 過去につけられた跡なんて、全て残らず消えてしまうほどに。

(忘れ……たいんだ……)
 
 思い出せば思い出すほど、ただ罪悪感に苛まれるだけなら。
 あの足跡一つない真っ白な雪のように、綺麗な心でいられるなら。
 いっそ過去の自分なんて跡形も残らないくらいに切り刻んで。
 まっすぐに、ただ一人を想い続けていたい──。
 
 


 翌朝、蓮川を旅館に待たせ、忍は目的地に向かった。
 目の前には、古い美術館。懐かしいその風景を目前に、忍は目を細めた。

 館内に足を踏み入れると、古い絵画が並び、常連であろう数人の人物が、まばらに絵を眺めている。忍も一つ一つの絵を眺めながら、ゆっくりと歩を進めた。
 覚えている。幼い頃、母親がよく連れて行ってくれた美術館。綺麗だと感じるものもあれば、不可解なものも多くあった、様々な絵がそこに飾られていた。
 その中の一枚である絵を目前にした瞬間、身動きすらとれなくなった、あの刹那の激しい感情。
 物心付いた頃から、恋をしていたのは、いつでもそんな「造り物」ばかりだった。どうしてなのか、今ならば解る。そこに込められた、熱さ、繊細さ、優しさ、愛しさ。そして何よりも激しい想い。その人の心が全て詰まっていたものだからこそ、その作品に恋をし、作品を通してその絵を描いたアーティストに恋をした。
 そして、その隣で、いつも待ち続けてくれていた人がいた。

 待ち合わせをしたその絵の前で、その人は静かに佇んでいた。
 忍が昔感銘を受けた絵のタイトルも、描いたアーティストの名も、はっきりと覚えてはいなかった。だが母は、「好きだった絵」と言っただけなのに、すぐに「解りました」と返事をした。
 忍はわずかに高鳴る鼓動を感じながら、絵を見上げる母の背を見つめた。
 どんな顔をしていたのか、どんな声をしていたのか、今の今まで不思議なほと思い出せなかったのに。
「お母さん……」
 振り返った瞬間、胸がトクンと高鳴った。どうしようもなく「懐かしい」と感じた。
「連絡ありがとう、忍さん」
 優しいトーンで響く、柔らかい声。
 後ろで一つに束ねた艶やかなストレートヘア。
 切れ長の瞳と長い睫。コートの下の細い体つき。
 何よりも、その小ささ儚さに、忍は心の内で愕然とした。
 この人は、こんなにもか弱そうな女性だっただろうか。
 見下ろさなければ視線も合わせられない母親を前に、忍は切なさばかりを覚えた。


「池田さんは元気にしていらっしゃる?」
 館内をゆっくりとした歩調で歩きながら、ごく自然な口調で忍の母、佐和子が言った。
 忍は一瞬ギクリと狼狽するが、あくまで平静を装ってみせる。
「ええ……変わらず元気にしています」
「そう、良かった。あの時は本当に驚いたけれど、幸せにしてるのなら良かったわ」
「……すみません」
 か細い声で忍は言った。
 やはり言えない。とてもじゃないけど言えない。とっくに別れて今は別の男と付き合ってますなんで死んでも。内心冷や汗ばかりをかきながらも、忍は鋼鉄の仮面で狼狽を覆い隠した。
「お父様は、相変わらずよ。あなたと会ってることを知ったら、また大騒ぎするでしょうから、今日のことは二人の秘密にしましょうね」
「……ありがとうございます」
「仕方ないわ。会えば戦いになってしまうし、戦いになればどちらかが死ぬしかない。男同士の世界とは、そういうものです」
「今は戦う女性も増えてますが……」
「そうね。今の時代ならば、私も一緒に戦いたかったわ」
 クスリと微笑みながら、佐和子は言った。その様子は、もう何もかも解っていて静視しているものだと、容易に察することが出来た。改めて忍は、この母だからこそ父と生涯を共に出来るのだと実感する。
 支えてくれていたのだ。見えないところでいつも。どうしようもなかった父のことも、どうしようもなかった自分のことも。
「あなたは今も、戦っているの?」
「……戦える限りは、戦い続けます。僕はやっぱり、男ですから」
「それなら安心だわ。立派な息子に育ててくれたお父様に感謝しなくちゃね」
「あの父に感謝できるのは、貴方くらいなものですよ」
 忍が飾らず物を言うと、佐和子は相変わらず微動だにしない笑みを浮かべた。
「あの人はね、どうしようもなく子供なの。昔から、いつでも強くてまっすぐで躊躇わなくて、目的に向かってまっすぐ突き進んでいく。動物に例えたら、猪かしら?」
「猪……ですか」
 あまりに的確な答えだが、つまりこの人にとって父はペット感覚なんだなと、忍は妙に血のつながりを実感させられた。
「でもね、人の心にはとっても不器用な人なのよ。私があの人に出会ったばかりの頃、実は私には他に好きな人がいたの。私にとってその人は初恋の人で、本当に好きでどうしようもなかったのだけれど、お父さんたら何度断られてもめげなくてね。あなたじゃなきゃ駄目なんです。俺についてきて下さいって。何度も、何度も、何度でも」
 懐かしそうに思い出を語る母を隣に、忍はただ黙って静かに耳を傾ける。
「その頃好きだった人とは、あまりに身分が違いすぎてね。一緒になれるはずがないのは解っていたから、もう仕方ないなって。この人でいいやって。そう、思っちゃったのが間違いだったのかしら」
「間違い……だったんですか?」
「……ううん、間違いなんかじゃないわ。自分で決めたの。「もうこの人にしよう」って」 
 そう言って目の前の絵を見上げた佐和子の瞳は、酷く強いもので。忍は改めて母の強さを思い知らされた。
「自分で決めたことだから、今もまだ頑張れているのよ」
 今忍の目の前にいるのは、一人のか弱い女性ではなく、戦う女性の姿そのものであった。
「どうしたら、この意地っ張りな性格が直ると思う?」
「無理に治す必要は、ないと思います。それも含めて、自分なんですから。本当に本気で疲れたら、頑張る気力も失いますよ」
「まるで、本当に本気で疲れたことがあるみたいな言い方ね」
 クスリと佐和子が微笑む。図星をつかれ、忍はやや顔を赤らめた。
「やっぱり私よりも、貴方の方がずっと柔軟だわ」
「そんな風に思ってたんですか」
 かなり意外だと忍は目を見張った。
「貴方も相当頑固な子だったけれど、人に合わせるのは得意な子だったわ。自分がどうしても譲れないこと以外は、こちらが拍子抜けするくらいあっさりと受け入れてくれた。おかげで、ずいぶん安心させられたものよ。この子は、私とは全然違う人間なんだって」
「自分には似て欲しくなかったと?」
「だって、大変ですもの。私に似てしまったら。こう見えて私、信じられないくらい自分中心で頑固なんですよ? だから、あの人とやっていけるの」
「僕には全然、そうは見えませんが……」
「良かった。それは私が上手に仮面を被れていた証拠ね」
 その言葉に、忍は感銘を受けた。仮面を被ること。ずっとそのことに罪悪感を抱いていた忍にとっては。
「嘘は……苦しくないですか?」
「貴方は昔から、本当に優しい子ね。でも、それでは政治の世界では生きていけない。お父様は、貴方にそれを教えてくれた。憎むのは仕方ないけれど、感謝も忘れてはいけませんよ」
「……はい、すみません」
「良い子」
 やはりこの人にとって、自分はまだまだ赤子同然なのだろう。気恥ずかしい想いばかりが駆け巡る。
「それで今日は、何を伝えに来たの?」
「貴方に……謝りたくて……」
「謝る? 何を?」
 佐和子がきょとんと首をかしげた。
「貴方のことを……少しも、大切にして来なかったから……」
 はっきりとしたビジョンがない訴えだけに、どう伝えて良いか解らず戸惑いがちに放った忍の言葉に、佐和子は驚いたように目を見開いた。それから、可笑しくて仕方ないようにクスクスと笑い始める。忍は眉をしかめた。
「やっぱり親子ね、貴方達」
 ひとしきり笑い終えた後、佐和子が仕方ないように言った。
「つい先日、お父様も同じことを言ってきたわ。突然、一緒に旅行に行こうなんて言い出してね。旅行中、一言も喋らなかったのに、帰りの電車の中で突然、「今まですまなかったな」って。「なぜ?」って答えたら、「これからは大切にする」って」
 あの父がそんなことを。忍は驚きを隠せなかった。
 しかし佐和子は相変わらず可笑しそうに笑う。
「そう言いながら、今もちっとも変わってないのよ。だから私、「大切にするの意味、解ってますか?」って、いつか言ってやろうと思ってるの。あの人が戦いに敗れて、どこにも行けなくなるくらい弱った隙を狙って、今まで言いたかったこと全部言い続けてやろうって思ってるのよ」
 それは随分、最高にして最悪の復讐だと、あくまでとどめを刺すつもりかと、忍は今始めて母の恐ろしさを知った。 
 あっさり負けを認め逃げた挙句に、また追われ逃げ続け辟易としている自分では、やはりこの母には適わない。そう悟った瞬間でもあった。
「忍さん、反省は、しないよりはする方が良いわ。でも、大切なのはその先に自分がどうあるかだと思います。貴方は私に申し訳ないって謝って、それですっきりするかもしれない。でも、長い時間の苦悩をたった一言で終わらせられてしまった私の気持ちを考えたことはある?」
「それは……すみません、無いです」
 言われてみれば確かにその通りで、一方的な感情の押しつけでしかなかったことに気づかされ、忍は母の厳しさを数年ぶりに実感した。
「お父様も一緒。謝ってそれで終わりで、また同じ事を繰り返す。忘れっぽいのね、男の人って。でも女は一生忘れないってこと、これからの貴方の人生のために、よーく覚えておいてね?」
「……はい」
 言い返す言葉もなく忍は頷いた。
 そういえば、昔からこういう人だったと、忍は唐突に子供時代を思い出す。
 周囲の人間があっさり騙された演技も嘘も言い訳も、どうしてかこの母にだけは通じなかった。そのたび面白くない気持ちを抱え、反発心ばかりを覚えていた過去の自分を思い出す。つくづく子供だったなと思い、忍は再度「すみません」と心の内で呟いた。
「お説教はここまで。私の方からも、今日はたくさん謝らせてもらうわ」
「え……」
 それこそ何をと、忍はきょとんと目を丸くした。
「貴方に一番大事なことを、伝えて来なかったこと」
 佐和子はそう言うと、姿勢を正し、まっすぐに忍の瞳を見つめた。
「愛してるわ、忍」
 その言葉を聞いた瞬間、忍は一枚の絵に生まれて初めて恋をした日を思い出した。
 たった一言。それだけだった。でも、何よりも欲しがっていた言葉だったように思う。あの絵の向こうから。あの絵を描いた人に。
 そう言って、抱きしめて欲しかった。抱きしめたかった。
 でも、それは決して叶うことのない夢でしかなく。
 諦めて、背を向けたその刹那、いつもそっと手を握ってくれた。
 それが、母の手だった。
(あ……)
 忍の瞳に涙が溢れた。
 佐和子の手が、忍の身体をそっと包み込む。 
 細くて柔らかくて懐かしい匂いがする体。こんなにも心が覚えているほど、何度も抱きしめられていたはずなのに、どうして忘れてしまっていたのだろう。
 溢れ出る感情と共に、忍はまた過去の記憶を一つ思い出した。 


(待って……!)

 石につまづいて、手の平から、膝から、血が流れた。
 痛くて痛くて、すぐに立ち上がることなんて出来なかった。それなのに、自分を置いてどんどん歩いていってしまう父と母の背中。
『手を出すな、佐和子』
『でも……』
『いちいち甘やかさなくていい。行くぞ』
 なんて、冷たい背中だろうと思った。
 でもあの時、確かに、母は振り返ったのだ。
 とても、悲しげな瞳で。
 今にも泣き出しそうな表情で。
  あの時、母が心の中で叫んでいた言葉は──。

「ごめんなさい……」
 ぎゅっと抱きしめてくる母の震える肩にそっと手を置き、忍は切なげに睫を伏せた。
 どれだけ、辛かったのだろう。苦しかったのだろう。切なかったのだろう。
 でも、手を伸ばしてはいけないのだ。
 そこに本当の、愛があるなら。
 自分の手から膝から、そして心臓から、血が流れ、分身を引き裂かれるような痛みに苦しんでも。
 本当の想いを殺してでも、離れなければならない時があるのだと、解る今ならば。
「忍……」
 やっと触れられたと、そう囁くように、涙まじりの声が胸に響く。
 忍はそっと、母の身体を抱きしめた。
 あの時、痛くて苦しくて寂しくて不安で、そんな自分を置いて言ってしまう両親の背に絶望を感じ、求めることを諦めてしまった自分。弱い自分なんて要らないんだと、切り捨ててしまっていたのは、他の誰でもない自分自身だった。すぐに立ち上がって追いかければ、きっと手を差し伸べてくれていたはずなのに。父も母もずっと、立ち上がり、追いついてくる強さを切望していたのに。
 忍は後悔ばかりに駆られ、自分と同じように強い支配の下で必死に耐えていた母の背に腕を回し、労わりを持って抱きしめた
 
(会いに来て、良かった……)
 
 小さな身体を抱きしめながら、忍は心からそう思った。

 
 
「また……連絡くれる?」
「……はい」
「今は、良い時代ね。女も自由に生きれる。私が携帯電話持ってるなんて知ったら、お父さんすぐ取り上げちゃうでしょうけどね」  
「お母さんのことが好きで心配で仕方ないんですよ、きっと」
「そうね。だから、いつか絶対に、言ってやろうと思うの」
 まるで少女のような笑顔で、佐和子は言った。
「「愛してる」って。お父さん、どんな顔すると思う?」
「……大体、想像は……」
「でしょう? でも仕方なくよ。本当に、絶対に、仕方なくなんだから」
 クスクス微笑む佐和子は、まるで少女そのもので。
「またね、忍さん」
 忍はそんな佐和子を、穏やかな微笑で見送った。


 旅館に戻ると、相当に焦れていたらしい蓮川に飛び掛るように抱きしめられ、忍は素直に蓮川の身体を抱き返した。
「お母さん、元気でしたか?」
「ああ、元気すぎて拍子抜けした」
「良かった……。おれも、会ってみたかったです」
「また東京に来てもらう。おまえ絶対に遊ばれるから覚悟しておけ」
 きっと次に会った時には、光流のことも、蓮川のことも、全て包み隠さずなんでも話せるのだろうと忍は思う。それはまるで、長年付き合ってきた親友のように。
「先輩の母親ですから、なんとなく想像つきます」
 はぁとため息をつきながら言う蓮川に、忍は可笑しそうに笑ってみせた。



 線香に火をつけ墓の前に供えると、二人は同時に手を合わせた。
 「蓮川家」と彫られた墓石に綴られた名前は、たった二人だけ。祖父や祖母の名前すら知らないという蓮川の両親は、一体どういう人達だったのか。蓮川が高校を卒業してから一度だけ兄に聞いたが、「駆け落ち同然だったらしい」としか兄も知らなかったと言う。まさか母も、こんな若くして子供達を残し逝ってしまうなど予想もしていなかっただろうから、知らなくても仕方ないと蓮川は言った。
 高校生男子が、頼る親族もなくたった一人で子育て。その事実も凄いが、それ以上に、兄さえいれば他に何も望まなかった蓮川の、天性ともいえる素直さ純真さも稀だと忍は思う。
「母親は、どんな人だったか覚えているか?」
「……ぼんやりと、よく動く人だったなっていうのは覚えてます」
「よく動く?」
 いまいち意味の解らない蓮川の言葉に、忍は首をかしげた。
「なんていうか、いつもバタバタしてたような……。たぶん仕事で忙しかったからだと思うんですけど、一緒にご飯食べててもすぐにどこか行っちゃったり、毎朝「ほら、早く!」って急かされてばかりだったり、やっと一緒に寝れると思ったら、すぐ起きてまたどこかに行っちゃったり……」
 蓮川の話を聞きながら、忍はなるほどと頷いた。おそらくは生活にいっぱいいっぱいだったであろう蓮川の母親を想い、同情心ばかりを寄せる。
「他に思い出は?」
「……保育園の帰りにスーパーに買い物に行くと、いつも必ずお菓子買ってくれました。それも「一個だけよ」が口癖で、いつも必ず一つだけ」
「一つ以上、ねだったことはないのか?」
「そうですね……。一つって約束だったから。その代わり、どれにするかいつも凄く迷ってましたけど」
「……おまえらしいな」
 優柔不断は生まれつきかと、忍はクスリと微笑んだ。蓮川が拗ねたように口を尖らせる。
「でも、いつも急かしてばかりの母親が、その時だけは、じっと待っててくれました。おれがどれか選ぶまで、三十分でも、一時間でも……」
 しかし母との思い出を語る蓮川の表情は、到って穏やかなもので。とうの昔に色々な葛藤を乗り越えているのだろうと感じさせられる。
「自分で選んだ物は、どうだった?」
「後悔……ばかりでしたね。やっぱりあっちにすれば良かったとか、こんなものにするんじゃなかったとか、次はあっちにしようとか……」
「ネガティブなのも生まれつきか」
「……そのようです」
 肩を落とす蓮川に、忍は柔らかく微笑んだ。
「今も、後悔してるか?」
「え……?」
「俺を選んだこと」
 墓を見つめたまま忍が問うと、蓮川は咄嗟に首を横に振った。
「まさか! それだけは、絶対に有り得ません!!」
 断固として言う蓮川に、忍は顔を向けないまま、じっと目の前の墓を見続けた。
「そう言えるようになったのは、お母さんのおかげかな」
 囁くように言って目を細めた忍の言葉を聞いた途端、蓮川の瞳にじわりと涙が浮かんだ。
「……はい。感謝します」
 それから二人、そっと手を繋いで、ただ目の前にいる人を見つめ続けた。
 
 大丈夫。どんな時も、大切な時には、必ず見守り続けます。
 忍はそう心の中で、目の前の人に告げた。
 きっと貴方の息子のことだから、これからもずっと、ああすれば良かった、こうすれば良かったって迷い続けてばかりで。
 そのたびにきっと、貴方と同じように心の中で苛立ちながらも、じっと我慢して、待って、待って、待ち続けて。
 だって、そうでしょう? 
 自分で選んだものなら、たとえどんなに気に入らなくても、どんなに後悔しても、決して投げ出したりはしないはずだから。
 じっと我慢して、最後まで責任を持って、大切にするはずだから。
 この子なら絶対に大丈夫だって、信じることが出来たんじゃないかと、思うんです──。


「そうか、やっと決まったか。これでおまえもようやく一人前の大人だな」
 蓮川が何度も何度も何度も面接に落ちて、ようやく就職先が決まったのはそれからニヵ月後の事。蓮川の実家まで一緒に報告に行った忍は、目の前で死ぬほど安堵している一弘に同情せずにはいられなかった。
 面接に落ちてはどん底まで落ち込み、次の面接に落ちてはまたどん底まで落ち込み、どんどんネガティブになっていく蓮川相手に、この二ヶ月忍はどれほど苦悩したかしれない。そのたび飴(=エッチ)と鞭(=日常)で気合を入れ、どうにかこうにか決まった時には、忍自身もう疲れ切って喜ぶどころではなかった。
「おめでとう、やっくん。いーっぱい食べてね! 忍君も、やっくんのこと助けてくれて本当にありがとう!!」
「え……何か助けてもらいましたっけ、おれ?」
 すみれの言葉の意味が全く解っていない蓮川を前に、忍はわなわなと肩を震わせた。
 気づいてない。やっぱり気づいてないんだこいつ。高校時代と少しも変わらず、周囲の苦労など全く解っていない蓮川に、忍はひたすら殺意を覚える。
「あ、ごめんなさい! わたしったら、ビール買い忘れてたみたい! そこの酒屋さん行ってくるね」
「すみれちゃん、おれ買ってくるよ。重いし」
 慌てるすみれに、蓮川がいつものように言った。
「やっくん、ぼくも行くぅ!」
 その後ろを、緑が慌てて付いて行った。
「待ってぇ、やっくん!」
「さっさと靴履け、置いてくぞ」
「やっくん履かせてよぉ!!」
「一分だけ待ってやる」
「う``ー……、」
「三、二、一、はい終了~」
「わーーーん!!! 待って待って待ってぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」
 ぎゃあぎゃあ喚きながらも、どうやら無事に後を着いていったらしい緑の泣き声を聞きながら、忍はビール片手に苦笑した。
「あれは先生の真似ですか?」
「んー……俺プラス、俺が知らないところで育ててくれた連中のおかげかな」
 ビールを片手に、一弘もまた穏やかな笑みを浮かべながら言った。
「……感謝、してるよ。おまえらには、本当に。俺は結局、あいつに何もしてやれなかったからな」
 台所ですみれが包丁の音をたてる。酷く懐かしい音だ。一弘の懐かしそうな瞳と声がその音と重なり、忍は黙って耳を傾けた。
「俺が小さかった頃は、まだ親父が生きていてな。その頃はおふくろもまだ専業主婦だったから、ずいぶん余裕があって。親父はけっこう厳しいタイプの人だったんだが、どれだけ怒られても、俺にはおふくろって逃げ場があった。でもあいつには、そんな逃げ場がどこにも無かったと思うんだ。あいつ育ててた頃は俺もまだまだガキで、全然余裕なんてなくて、常に怒ってばっかいたよ。だからあいつ、ネガティブで臆病で頑固で、僻みっぽく育っちまったんだろうなぁって、本気で後悔した」
 その苦労は並大抵ではなかったのだろう。一弘は心の底から後悔しているように言った。
「だから緑には、必要以上に怒鳴ったり怒ったり殴ったりは絶対にしないようにって決めてんだ。そうしたら今度は、自己中で我儘で軟弱に育ったときてる。子育てってのは、ほんと難しいもんだって思い知ったよ」
「でも、どっちも可愛い」
 そういう顔をしています。忍が言うと、一弘は苦笑した。
「僕にはまだ、子育ての大変さは微塵も解りませんが、貴方がとても愛情深い人だということだけは、よく解ります」
 忍は緩やかに言葉を続けた。
「あいつは確かに、ネガティブで臆病で頑固で僻みっぽくて……でもそれは裏を返せば、思慮深く、人を思いやり、決して自分を曲げない信念を持ちならも、謙虚であるということではないでしょうか。僕は、あいつをそんな風に育ててくれた貴方に、とても感謝していますよ」
 忍が穏やかな口調で言うと、一弘は一瞬目を見開き、それから俯きがちに静かな微笑を浮かべた。その瞳には、わずかに涙が滲んでいる。
「はは……まさか、おまえに救われる日が来るとは、思ってなかったな」
 今までの苦労を物語るように、一弘は忍の言葉を噛み締めていた。
「おまえの言うとおり、正解がないのが人間ってものだ。だからあいつらの良いところも悪いところも、全て含めて愛してやらなきゃならない。それが、俺の役割だと思ってるよ」
「いずれ……あいつにも解るはずです。この俺ですら、愛されることで初めて理解できたんですから」
「……それは、一也には黙っておこう」
「ありがとうございます」
 誰に、とは言わなくともすぐに察した一弘は、やはり高校時代から愛情を持って自分達を見てきたのだろうと、忍は改めて思い知った。
 しみじみと語り合った二人の間に、しばしの沈黙が訪れる。
「あー……そうだ、一也の小さい頃のアルバム見るか?」
 不意に一弘がこほんと咳き込み、改まって声を発した。立ち上がり、本棚の奥から一冊のアルバムを取り出す。 
 世間一般の親と違わず、息子自慢がしたいらしい一弘に、忍は黙って付き合うことにした。
 開かれたアルバムには、様々な表情の蓮川が映っている。初めての運動会。一位をとった蓮川の誇らしげな表情。小学校の卒業式。兄と二人きり、でも幸せそうな蓮川の姿。中学校の卒業式。ちょうど初めて出会う少し前の蓮川だ。反抗期にぴったりの、兄とずいぶん距離をとった小憎らしい佇まい。忍はクスリと微笑んだ。
「本当に、緑とよく似てますね。実はあいつの子だったりは……」
「するか馬鹿者」
 そんな冗談を混じらせつつ、最後のページにたどり着いたその時、忍はわずかに目を見開いた。
「これは……?」
「ああ、あいつが小学校で初めて描いた俺の絵。他の子はみんな母の日のプレゼントにって母親の絵を描いたらしいんだが、あいつには俺しかいなかったからな」
 苦笑ながら一弘は言った。
『おにいちゃん いつもごはんつくってくれて ありがとう』
 かろうじて人の形に見える兄の絵と、かろうじて読める文字で書かれた兄への想い。
 そのあちこちに、カクカクした丸い物体がアンバランスに繋げられているだけの花のイラストが添えてある。忍は見事なまでに同じ形をした、蓮川が生まれて初めて作成したプログラムを思い出し、プッと噴出した。
「笑うくらい下手くそだろう? でも、涙出るほど嬉しかったんだよなぁ」
 しみじみと思い出を語る一弘の隣で、忍はついには涙目になるほど笑い続けたのであった。


「それはそうと忍」
「はい?」
「もう一つ、本気で後悔していることがあるんだ。おまえにも謝らなければならないと思ってる」
 やけに小声で真剣な顔つきを向ける一弘を前に、忍は首をかしげた。
「身内のピー音を聞くのが、あんなにもキツいもんだとは思わなかったんだ。本当にすまなかったな」
 思い切り真剣に、しかしどこかからかいの意も含めた一弘の言葉に、忍は途端に顔をカッと赤く染めてわなわなと肩を震わせた。
「しかし人生何が起こるか解らないなぁ。まさかおまえをうちの嫁に貰うとは、思ってなかっ……」
 あくまでからかう口調で飄々と言い放つ一弘の顔面に、気づけば思い切りパンチをくらわせていた忍であった。
 
 

「なんだよ、その変な待ち受け」
 仕事帰り、忍が人気のない道を歩きながら携帯電話を開くと、肩に重みがかかったと同時に光流の声が耳元で響いた。
 忍は奇妙な形の花が上下左右に動いているだけの待ち受け画面を見つめながら、柔らかく微笑んだ。
「……今日は、嫌がんねぇの?」
 さっきからずっと抱きついてるんだけど。光流が言うと、忍は全く動じない表情のまま、そっと光流の腕に自分の手を重ねた。
「逃げても何も変わらないだろう?」
 光流の顔は見ずに忍は言った。
「……どういう心境の変化だ?」
「別に……。ただ、もう意地張るのはやめようって思っただけだ」
「おまえから意地をとったら何が残んの?」
「あんまりな言い様だな」
 けれど不思議と不愉快さはどこにもなく。
 光流に抱きしめられたまま、ただ時間ばかりが過ぎていく。
 どのくらい、そうしていただろう。
「光流……」
 長い沈黙の後、不意に忍が口を開いた。しかし光流は忍の肩に顔を埋めたまま応えない。
「ずっと、ありが……」
「言うな!!」
 まるで聞きたくないと言わんばかりに、光流は忍の言葉を遮った。
「……言わせてくれないのか?」
「聞きたくねぇ」
 頑なに拒む光流の気持ちを汲み、忍は口を閉ざした。
 終わらせたいわけじゃない。終わりたいわけでもない。でも、それを言ったらきっと全てが終わってしまうのだ。あまりにも一方的に。母の言葉を思い出し、忍は切なげに目を伏せた。
「ずいぶん……苦労したな」
「……うるせぇ」
「俺の相手は、大変だっただろう?」
「うるせぇっつの……。解ったよーな口きくな」
 あくまで忍の言葉を拒む光流の苦悩を、忍は改めて思い知る。
 長いこと、どうして気づけずにいたのだろう。光流の優しさや忍耐強さ、そして何よりも深い愛情に、ずっとずっと甘えていたことに。
 だからこそ、たった一言で終わりにしてはいけない。でも、どうしても伝えたい言葉があるのだ。
「これからもっと、解っていくんだ……」
「解らなくていい」
「……緑ももう、五歳になったぞ」
 全てを泣くことでしか訴えることが出来なかったあの日から、もう五年。立って歩いて走って、少しずつ言葉で伝えられるようになって、これからもどんどん大きくなっていく。そうしていつか、自分達をも追い越していくのだろう。それを寂しいと思うのは、当然なのだけれど。
「人は成長するんだ。いくつになっても、どれだけ時が過ぎても、もうこれが限界だと思っても、困難を乗り越えるたびに変わっていく。俺もおまえも同じだ。あと五年もしたら、また全然違う自分になっているかもしれない。だから……解らないままでは、いられないだろう……?」
 尋ねても、応えは返ってこない。突然に強引に唇を重ねられ、忍は目を見開いた。触れるだけのキスの後、光流が真剣な目を向けてくる。
「……俺は、変わんねーよ。今もこれから五年後も十年後も。俺の気持ちは絶対に変わんねぇ」
 変わらない。強い光を宿した瞳。揺るがない強さ。壊れることのない想い。深い愛情。
 だからこそ恋焦がれ、懸命に愛を注ぎ、離さないように必死だったあの頃。
 でももう、解放してやらなければならないのだ。
 必死でもがきしがみついて苦しんでいた、あの頃の自分を。
「光流……」
 もう一度、言わせてはくれない言葉を放とうとしたその時だった。
「光流!!」
 突然、自分の声に別の声が重なり、忍は驚愕に目を開いた。
 どこかで聞き覚えのあるその声の方向に目を向けると、今だけは絶対に会いたくなかった人物がそこに立っていた。
「よう、久しぶりだなオッサン」
 しかし光流は、まるでそこにいたのが解っていたかのように、余裕の笑みを一弘に向けた。
「久しぶりだなじゃないオッサンじゃない!!! おまえら、一体全体どういうつもりだ!!??」
 ずかずかと詰め寄ってくる一弘を前に、光流は相変わらず忍に抱きついたまま飄々と言ってのけた。
「どーもこーも、俺ら、まだ別れたわけじゃねーから」
「な……っ!」
 光流の意外な台詞に、忍は目を見張り額に汗を浮かべた。
 同時に、こいつ絶対に保険医が見てたことに気づいていたと気づき、憤慨する。
「ってことは二股か? 二股なのか忍!!??」
「ちが……っ」
「おまえ結婚の約束までしておいて、ずっと弟の純情を弄んでたのか!!??」
 しまいには胸ぐらを掴まれ牙を剥かれ、忍はキッと鋭い瞳で光流を睨みつけた。
「今更なんだよオッサン、こいつが性悪で血の通っていない冷血鉄仮面なのは、あんたもよく知ってるだろ? あんたの弟なんかに本気なわけねーじゃん。全部お遊びだよ、お・あ・そ・び」
「光流……っ、貴様……っ」
 しらっとある事無い事言い続ける光流を、忍は殴ってでも止めようとするが、向けた拳はあっさり止められた挙句に羽交い絞めにされ声を奪われた。
「大体、こいつが俺と別れるとかあり得ねーってあんたも解ってんだろ? そういうわけだから、弟にはさっさと諦めるよう、あんたからよーっく言い聞かせてくれよな?」
 怒りにわなわなと肩を震わせる一弘の前で、光流はあくまで飄々と言い放つと、「うーうー」と反論し続ける忍の声を力技で奪ったまま、一弘に背を向け忍をずるずると引きずっていく。
「う``------……!!!!!!」
 やっぱり一時でも、「ありがとう」だなんて思った自分が馬鹿だった!!! いつか絶対殺す!!!! っていうか今すぐ死ねこのクソ馬鹿下衆の極み野郎!!!!!!! 心の中でありとあらゆる罵倒を吐きながらも、光流の力技には結局勝てず、ずるずると引きずられ続けた忍なのであった。