巣立ち<後編>
サクラサク、季節。
「大学合格、おめでとーございまーす!!!」」
クラッカーの音が盛大に鳴り響き、蓮川と瞬が笑顔で拍手をした。
無事に大学受験が終わり、あとは卒業を待つだけとなった光流と忍は、後輩達からの祝福に笑顔を浮かべる。とはいえ、寮の中には大学不合格者もいるので、大々的に騒ぐことはできず、いつものメンバーでひっそりと行う祝宴。
「先輩達、卒業したら一緒に住むんでしょ? もう家は決めたの?」
ビールの缶を片手に、二人に瞬が尋ねる。
「ああ、無事合格したことだし、もう探しに行かねーとな。忍」
光流のその言葉に、忍は咄嗟に返事が出来なかった。
「焦らなくても、何とかなるだろう」
取り繕うように、当たり障りのない答えを返す。
「ついに卒業しちゃうんですね……」
ふと、蓮川が情けない声をあげた。
「もーすかちゃん、今から泣きそうになってどうすんの?」
「べ、別に泣きそうになんかなってない!!」
「絶対、卒業式は大号泣だね。タオルいっぱい用意しといてあげるからね」
「泣かないっつってんだろ!! 絶対、泣かない!!」
ムキになって蓮川が大きな声をあげる。
「なら賭けるか? 蓮川」
忍がからかうように声をかけると、蓮川は一瞬怯み、しかし口をへの字に曲げて応えた。
「い、いいですよ! なんでも賭けてやろーじゃないですか!!」
「やめときなってすかちゃん。大損するだけだから」
「そうそう、やめとけって。安心しろ、第二ボタンはおまえにためにとっておいてやるから」
「そんなもんいりませんっ!!!」
真剣な光流の表情に、蓮川は即座につっこんだ。
こうして後輩をからかえるのも、あとわずか。
飲むだけ飲んで、酔っ払って動けなくなった蓮川を瞬が肩に担いで自室に戻っていった後、光流が忍にむかって口を開いた。
「明日、部屋探しにいこうぜ。暇だろ?」
明日は日曜日。
特に何の予定もない。
けれど忍は、応えに詰まった。
それよりも、いったい光流はどういうつもりなのだろう、と思う。
図書室で言い合いになり、乱暴に組み敷かれてからというもの、表面上はいつもと変わらない光流だったが、体の関係を求めてくることは
一切なくなっていた。まるで、これまでの事なんて何もなかったかのように。
我ながら、よく無事に大学合格できたものだと思うくらいに、忍にとって、不安で辛くて苦しい日々が続いていた。
光流が何を考え、どういうつもりで、これから一緒に暮らそうと言うのか、少しも理解できない。
「ああ……分かった」
けれど尋ねることも、否定することも出来なかった。
やはりまだ、恐怖は拭えていない。
どれだけ自分の心を訴えても、また深く傷つけられるだけだと思ったら、胸の内に言葉が詰まって出てこない。結局は何も変わらず、このままずっと光流に縛り付けられるだけなのだろうかと思い、忍は暗い表情をした。
進歩の無い自分に、ため息が漏れる。
それなのに、離れられない。
その勇気が持てない。
今、光流から離れたら、きっと生きてはいけないと思うからだ。
欲しがって、依存してばかりの小さな子供みたいな自分に、心底嫌気がさす。
けれど、見つからない。
自由になる、方法が。自分だけの翼で飛ぶ方法が、分からない。
「やっぱニ部屋は必要だよな~。あ、こことか良くねえ?」
実家の母親から手渡された物件を見ながら言う光流に、忍はただ頷くことしかできずにいた。
翌日、不動産を巡り巡って良い物件を探し回るものの、なかなか予算と条件が合う物件は少なく、結局決まらないまま夕刻に近い時間になってしまった。
「なかなか無いもんだな~。おまえは、どっか気に入ったとこあったか?」
「別に……。俺は、おまえが気に入ったところで構わない」
「……」
光流が一瞬、何か言いたそうな顔をしたが、忍は敢えて尋ねなかった。
「なあ、今からちょっと、学校行かねえ?」
「え?」
何故かと尋ねる間もなく、光流は早足で歩き出す。
学校になど行ってどうするつもりかと思いながら、やはり尋ねることはできず、忍は黙って光流の後を着いていった。
誰もいない校庭の真ん中で、ようやく光流は立ち止まった。
そしてトラックを一周するためのスタートラインに立つ。
「忍、トラック半周、どっちが速いか勝負しようぜ」
笑みを浮かべながら、光流が言う。
いきなり、何を言い出すのかと、忍は目を見張った。
「なんで、そんなことしなきゃならないんだ」
「頼む。一生に一度のお願いだと思って、聞いて?」
屈託なく微笑んで言う光流に、忍は首を横に振ることができなかった。
仕方ないように小さく息をついて、光流の横に立つ。
「本気、出せよ。絶対に」
光流が強い口調で言った。
忍は無言のまま、地面に肩膝をついて、スタート体制をとる。
光流も同じように体制を整えた。
「いくぜ、用意! ……スタート!」
合図と共に、二人は走り出した。
ほぼ同じ速さで、トラックを駆け抜ける。
二人とも、本気だった。もし今が体育祭のリレーだったら、周囲から一体どれほどの歓声があがっただろうか。少しも追い越せない、差をつけられない相手に、勝ちたいと、心の底から思う。こいつにだけは、絶対に負けたくないと。
そうしてトラック半周を駆け抜けた時、二人のこめかみから頬に汗が流れ、すぐには声を出せないほどの息苦しさを覚えながら、互いを見つめ合った。
「で、どっちが勝ったんだ?」
「誰も見てないのに、分かるか」
「って、意味ねーじゃん! こんだけ本気出して走ったのに!」
「おまえが考え無しに走ろうなんて言うからだろう?」
「あーあ、バッカみてえ!」
額の汗を袖で拭いながら、光流は投げやりに言った。
そして、振り返って忍に笑顔を向ける。
「でもやっぱおまえ、凄いわ。たぶん負けたの、俺」
意外な光流の言葉に、忍はわずかに目を見開いた。
「勝ちたかったな、おまえに。最初で最後の、この勝負だけは、さ」
そう言って、光流はまた忍に背を向けた。
夕日に照らされるその後姿は、いつもの光流とはどこか違っていて、忍は真剣に光流の声に耳を傾けた。長い静寂の後、光流が静かに口を開く。
「俺……ずっとおまえに、嫉妬してた。何やっても叶わない相手になんて、今まで会ったことなかったから。だからおまえの言う通り、俺はずっと、おまえを自分に服従させたかっただけなんだと思う」
言葉とは酷く裏腹な、穏やかな声。
こんな風に、自分の胸の内を打ち明ける光流を、忍は初めて目前にする。
「でももう、やめる。おまえの前で、カッコつけたり、見栄張ったり……そういうの、全部やめる。弱い自分も、ちゃんと曝け出す。すぐには変われねぇかもしんないけど、精一杯、努力する。だから……」
瞬間、忍は大きく目を見開いた。
「だから……、頼むから……」
光流が肩を、声を、震わせている。
泣いている。
「そばに、いてくれ……」
光流が、泣いている。
どうして、今まで、気づかなかったのだろう。
忍は光流の背中を見つめながら、自分の目にもまた涙が溢れていることに、やっと気づいた。
ずっと、初めて自分が孤独に気付かされた時からずっと、光流はいつでも、自分の目の前を歩いていた。たくさんの人に囲まれて、愛されて、必要とされて、誰にとっても太陽のような存在だった。
だから、強いのだと。誰よりも強いのだと、思っていた。
でも、違う。
(本当は……おまえも俺と同じくらい、孤独だったのか……?)
ずっとずっと、一人だったのか?
こんなにそばにいたのに、俺達は、ずっと一人だったのか……?
「光流……」
忍はそっと、光流の肩に手をかけた。
ゆっくりと振り返った光流の瞳から、涙が流れていて。
「俺にはおまえが、必要なんだ……」
その涙を隠しもせず、光流は忍をまっすぐに見つめて言った。
「……ずっと……」
忍もまた、溢れる涙を拭いもせず、光流の体をそっと抱きしめる。
「ずっと、俺が……おまえを守る」
強く、強く抱き合いながら、二人はただ、涙を流した。
そして互いをしっかりと抱きしめ合った。
3年間の想いを、すべて曝け出すように。
忍は溢れてくる愛しさを全身で感じながら、やっと、自分の翼を手に入れたような気がした。
今なら、一緒に飛べる。 どこまでも、高く。 どこまでも、一緒に。
「だからっ、俺は九万以上出せねえっつの!!」
「狭いのは嫌だ。あと風呂も付いてないと」
「どっか譲らねえと、いつまでたっても決まんねーだろうが! おまえ、ホントに俺と一緒に住む気あんのか!?」
ひたすら物件を探し回るものの、忍があれは嫌だこれも嫌だと難癖をつけるため一向に決まらない家探しに、いいかげん光流は切れ気味である。
「どうしておまえはそう短気なんだ、まだ時間はあるだろう?」
「おまえがマイペースすぎんだよっ!」
何かと言い合いになるものの、話はいつも平行線だ。
「忍、ずっとマジで聞きたかったんだけど」
不意に、光流が真剣な表情で忍を見据えた。
「おまえ、ホントに俺のこと好きなの?」
少し不安げな表情。
しかし忍は顔色一つ変えず、答えた。
「言わなくても分かるだろう、それくらい」
「俺は超能力者じゃねえ!」
呆れながら光流は言った。
テレパシストじゃあるまいし、人の心の内なんて読めやしない。だから言葉にしてくれないと分からないのに、忍にはどうもまだそれがよく分かっていないようだ。
「なんか……おまえとは一生分かり合える気がしねえ」
そう言って、光流は深くため息をついた。
「そうだな」
同じ事を、忍も思う。
短気で一直線で感情的で、時折酷く子供っぽいと思ったら、妙に大人びているところもある光流は、やっぱり何を考えているのかよく分からないことの方が多くて、惑わされることばかりだ。
「でも、まあ、いいんじゃないか」
微笑を浮かべ、忍は言った。
「一生かけて、分かっていけば」
仰げば尊し、わが師の恩。
教えの庭にも、早幾年。
「みんな並んで~! 写真撮るよ!!」
「いえーいっ! おめーら全員俺の後ろに並べっ!!」
「光流てめっ、一番目立つ気だな?!」
「早く並んでよ~!」
卒業証書片手に、卒業生が揉めに揉めながら並ぶものの、ロクな写真が撮れず、瞬が小さくため息をついた。
「もう! 最後くらいビシッと決めてよね!」
いつまでもまとまらない卒業生たちに、瞬は例のごとく先輩を敬わない態度で接するが、まるで聞いちゃいない先輩達であった。
「て、手塚先輩……! あの、第二ボタン、下さい……!!」
そこへ、まるで空気を読まない布施が、大きな瞳にたっぷり涙を溜めながら、忍に向かって叫んだ。
途端に周囲の空気が凍りつく。
しかし忍はにっこり微笑んで、ブレザーの第二ボタンを布施に手渡した。
「おい……ここ男子校だよな、確か?」
「いやでも、密かに狙ってた奴は多いと聞いたぞ」
「それは光流のだろ。俺、忍からだけは貰う勇気ないわ。呪われるって絶対」
ヒソヒソと卒業生たちが耳打ちをする中、布施が大号泣する。
「そーいや蓮川はどうした? 瞬」
ふと光流が、思い出したように辺りを見回した。
卒業式終了からずっと、蓮川の姿が見当たらないことに、やっと気づいたようである。
「あー……たぶん、どっかで泣いてるんじゃないかなぁ」
苦笑しながら瞬が言った。
「探しに行ってやれよ、光流」
「しゃーねぇなあ、ちょっと行ってくるわ」
忍にうながされ、光流は半ば呆れた様子で、その場を去る。
「スカちゃん大丈夫かな~」
「そういうおまえは大丈夫なのか?」
表面上、いつもと何ら変わりなかった瞬が、忍のその言葉に、突然目を潤ませた。
「や……やだなぁ! 僕は全然……平気……っ」
こらえきれないように涙を流す瞬の頭を、忍はぽんと叩いた。
「忍先輩~……っ」
瞬が泣きながら忍に抱きつく。
「お、共学っぽい風景が!!」
「いやだからここ、男子校だって!」
「もう、先輩達、うるさい! せっかく良いシーンなのに!!」
すかさずつっこんで来る先輩達に、瞬は涙をぬぐい口をとがらせ、忍はその光景を穏やかな笑顔で見つめていた。
光流がやっと蓮川の姿を見つけたのは、裏庭の木の下。
「おいスカ~、何やってんだ、こんなとこで?」
蓮川は、木の幹に向かって光流に背を向けたまま、振り向きもしない。
「ほら、第二ボタン、とっていてやったぞ?」
「い、いりません……っ!」
からかうように光流がそう言うと、蓮川はやっと声をあげた。
けれどその声は震えていて。
光流は仕方ないようにため息をつくと、蓮川の肩にポンと手を置いた。
「すぐ近くにいるんだから、またいつでも会えるだろ?」
光流の優しい声に、やっと蓮川は振り返る。そして、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、光流の体に抱きついた。
「あーもう、ぜってぇ鼻血出すなよ?」
苦笑しながら、光流は蓮川の体を抱きしめる。
最後の最後まで、泣き虫で意地っ張りで甘ったれで、これからもどうしようもなく心配だけど。
ずいぶん強くなったなと、光流は思う。
「頑張れよ、蓮川」
蓮川にだから、言える言葉。
強くて逞しくて、どこまでもまっすぐな、大切な弟。
頑張れ。
もう一度心の中で繰り返して、光流は強く蓮川を抱きしめた。
時折、あくびをしながら勉学に励んだ教室。
仲間たちと笑いながら走り抜けた廊下。
時に激しくぶつかり合ったり、居心地の悪さに戸惑ったり、理解し合えず寂しさを覚えたりもした。
大人たちに守られ、小さな世界でたくさんの事を経験した学び舎とも、今日でお別れ。
もう、子供ではなくなっていく。
これからは誰に守られることもなく、自分たちの足でしっかり立って、歩いていかなければならない。
でも、きっと、大丈夫。
「もう一度、ここからやり直せたら、何か変わってたかな?」
「……変わらないだろう、何も」
誰もいない図書室。
穏やかな表情をして、二人は見つめ合った。
静寂が二人を優しく包み込む。
「好きだよ、忍」
光流がそっと、忍の頬に手を添える。
「好きだ……」
そしてそっと、抱き寄せる。
近づいてくる瞳に、忍は静かに目を閉じた。
優しくタイをほどく光流の指先が、ほんの少し震えていて、重なり合う唇はどこまでも熱い。
もしあの時、最初からこうして触れ合っていたら、もっと早く分かり合えたのだろうか。
それとも、やはり同じように、傷つけあい憎しみあい、そして愛し合ったのだろうか。
答えは分からない。
けれど、一つだけ、はっきりと分かることがある。
きっとどんな出会い方をしても、どれだけ傷つけあって壊しあっても、最後にたどり着く場所は、きっと同じだ。
「……ん……っ」
優しく触れてくる、光流の指先に翻弄されながら、忍はただ、光流のことだけを想う。
好きだよ。
誰よりも、何よりも、愛している。
この場所で、初めて心の底から怒りを感じたあの時の激情よりも、ずっと強く、激しく。
「あ……、みつ……る……っ」
「気持ち……いい……? 忍……」
「……んっ……」
「俺も……」
何もかもが、一つに混ざり合う。
色。
形。
香り。
温度。
そして、心。
もう二度と、離れない。
離さない。
「もうひと泣き、しなきゃなんないな」
「ああ、そうだな」
卒業式が終われば、あとは退寮するのみ。
タイを締めてブレザーを羽織ると、二人は図書室を出ようとドアを開いた。
「……君たち、最後まで何をしてるんだね?」
光流がドアを開いた途端、何かにぶつかり、見上げるとそこには呆れ顔の一弘の姿があった。
「また覗き見しやがったな! おっさん!」
「たまたま、偶っ然、通りかかっただけだ! 俺だって気づきたくもなかったわ!!」
しばし睨みあいが続いた後、ふと、光流が表情を和らげた。
「……ありがとな、おっさん」
「えらい素直だな、珍しく」
「俺、素直だもん。事によるけど」
ニッと笑って、光流は言った。
「ま、人間、素直が一番だ」
一弘も笑い返した。
そして、ゆっくりと忍に目を向ける
「もう、大丈夫みたいだな」
「……はい」
忍はまっすぐに一弘の目を見て、頷いた。
「卒業おめでとさん。頑張って、幸せになれよ、おまえら」
そう言って、一弘は二人の頭を同時に撫でる。
少し迷惑そうに顔をしかめる光流と、ちょっと惚けた忍の表情。
明日から、ずいぶん寂しくなるな。
そう思いながら、一弘は心からの笑顔を二人に向けた。
そして──退寮日。
忍のネクタイを、光流が締める。
同じように、光流のネクタイを、忍が細く長い指先でそっと整えた。
寮を出る時は、制服で出ようと、二人で決めた。
もう二度と着ることはない、同じ色と同じ形の、思い出のたくさん詰まった制服で。
「先輩、すぐ遊びに行くからね!」
「おう、いつでも待ってるぜ」
後輩達はみんな、泣きそうになるのを精一杯我慢しながら、二人を見送る。
瞬はあくまで笑顔で。蓮川はやっぱり何も言えなくて、ただひたすら涙をこらえて俯いている。
「蓮川」
ふと光流が、蓮川にラッピングされた紙袋を手渡した。
「俺と忍からだ。大事にしろよ」
蓮川は一瞬驚いて、光流の顔を見れないまま、照れ臭そうにそれを受け取った。
「えー、すかちゃんにだけ? 僕にはないの~?」
不満げに声をあげる瞬に、忍がなにやらコソコソと耳打ちし、瞬が納得したようにクスリと笑う。
「そろそろ行くか、光流」
「ああ。じゃあな、おまえら」
右手を上げて光流がそう言ったと同時に、二人は後輩たちに背を向け歩き出した。
そんな二人を見送りながら、涙で滲んだ瞳を軽くこすって、瞬が蓮川に笑顔を向けた。
「なに貰ったの? スカちゃん」
蓮川もまた、こらえきれない涙を目に滲ませながら、光流に手渡された紙袋をそっと開いた。
しかし次の瞬間、わなわなと肩を震わせる。
紙袋の中に入っていたのは、避妊用具と、一言添えられたメッセージ。
『さっさとドーテイ捨てろよ!!』
「光流先輩っ!!! 忍先輩~~~っ!!!!!」
蓮川の鼻血と共に、大絶叫がグリーン・ウッドの前に響き渡った。
「なあ、蓮川、どんな反応すると思う?」
「そりゃやっぱり、鼻血吹く以外ないだろ」
まっすぐな道を歩きながら、二人はニヤリと笑いあった。
光流が忍の肩に腕をかける。
忍は笑っていた。
光流も一緒に、笑い声をあげる。
空はどこまでも高く、青く、澄んでいて。
今日もその下に、グリーン・ウッドが変わらない景色を描いている。 |
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