おまえはいつも、綺麗だ。食べたくなるほどに、綺麗だ。






【 贄 】 







 気の進まない接待は、する側であってもされる側であっても、質の悪い疲れを増幅させるだけのものだ。それでも、仕事上ではクライアントから遇されるケースのほうが多く、適度に愛想を良くしていれば済むからよい。しかし、実家絡みのものになると、そうはいかない。三十代になった頃から目に見えて増えた接待――つまりは見合いだ―――に、忍は辟易していた。そもそも結婚自体を考えていないのだから時間の無駄だし、何より忍には、同性ではあるが生涯をともに歩みたい人物がいる。いくら縁談をもってこられようと、タイミングを見計らって断りの意向を伝えなければならないのも精神衛生上よくなく、煩わしい。出来ることなら全てを無視したいというのが本音であるが、壊したくないと願ってしまうほどの穏やかさに包まれている暮らしを続けていくために、時折は親や親戚の希望に従って、顔だけでも出しておく必要があった。

 忍としては、仕事も順調に経験を重ねており生活に困ることはないという見通しもたってきたこともあり、正直なところ、自分の意思を手塚家の者に伝えて勘当だろうと放逐だろうと、好きなようにしてもらって構わないと考えている。しかし、忍が家を継ぐ気がないことを伝えた場合、親族間にいらぬ諍いごとが勃発する可能性は否めない。また、実家と距離を置くことを心に決めている忍としては、兄の気持ちが解らなくもなかった。故に、夢をあきらめて父の跡目候補として努力している旭への風当たりが未だに強い中で、自分が早々に手塚の家から離れてしまったほうが良いのか暫く様子をみていたほうが良いのか、判断をしかねる面もある。それに、行動を起こしたならば、父は必ず忍の身辺を調べるはずだ。そうなれば、光流や光流の家族に迷惑がかかるかもしれない。そのことが、忍にとっては何よりも気懸りであった。

 だから、渋々応じた今回の見合いも、仕事に追われているからと早々に引きあげてきたものの、時計は既に、夜の九時を回っている。忍よりも仕事に拘束されがちな光流も、週末や祝日には極力忍と過ごしたいと考えているようで、土曜日である今日は、通常なら既に帰宅している時間である。しかし、気の疲れからか妙に重たく感じられる足で辿り着いたマンションの前、自分たちの部屋を見上げてみれば、明かりが点っていなかった。

(まだ、帰っていなかったのか)

 忍は、闇に溶けこんでいる窓を眺めながら一抹の寂しさをおぼえ、同時に安堵していた。光流には法曹界の会合で外出するからと伝えて、実際は長野へ戻っていたためである。

 こうやって不本意な嘘をつきながら見合いに出向いたのは、何度目のことだろう。

 回数すら思い出せなくなった自分に嫌気がさしながらも、忍はエレベーターに乗った。そして、玄関のロックを解除しようとして、その必要がないことに気付いた。不用心だと一瞬眉を顰めた忍であったが、大雑把な面もある光流のことだ。近所のコンビニにでも出かけたのかもしれないし、鍵をかけ忘れたまま眠っている可能性もある。

「光流、いるのか?」

 忍は問いかけながら明かりを点し、リビングへ向かった。しかし、人の気配は感じられない。自室かもしれないと、今度は光流の部屋に向かって、一応ノックをした後で中に入った。

「―――光流?」

 ああ、いたのか。

 忍は、照明を落とした部屋の中でベッドに横たわっている人影を目にした瞬間、憂鬱さと後ろめたさで重くなっていた心が、じんわりと解れていくのを感じた。

 疲れていたのだろう。目を閉じている光流は、ネクタイを少し緩めたワイシャツ姿のままで、ベッドの上に仰臥していた。忍は、せめて毛布だけでもかけてやろうと、サイドテーブル上のスタンドを点けて、ベッド脇へと歩み寄った。

 と、そのときである。光流がゆっくりと瞼を持ち上げ、忍へと顔を向けた。

「悪い、起こしてしまったな」

 戻ったという挨拶代わりに軽く詫びながら、風邪をひくから布団をかけるように促すと、光流は夢うつつの状態なのか、大きくて澄んだ瞳を瞬きすらさせずに忍を見つめ、両の腕だけをゆっくりと、忍へとのばしてきた。

 光流はこのようにして、幼子が親の胸にすがりたがっているかのような仕草で、忍を求めてくることがある。普段は冗談めかして「もっと構って欲しい」だの「忍が冷たいから寂しい」だのと訴えてくるから、一見甘え上手にみえる光流であるが、長年ともに過ごすうちに忍は、光流の心の奥深くに染みついている孤独感や寂寥感が彼の魂に同化してしまっていることに気付いていた。だから、忍なりに精一杯の真摯さでもって光流と向き合ったところで一時的な安心感しか与えられずに、本当の意味で彼を癒すことが出来ずにいる。

 忍は、そのことを憂いていたが、時折であっても何ら飾ることのない本当の姿を自分に見せてくれるだけで十分なのだと近頃は考え、自分を納得させようとしていた。頼ったり甘えたりするのに躊躇いを感じる気質なのはお互いさまで、昔からのことだからだ。しかし、何でも分かっているつもりで何も知らなかった、ただの捻くれた子供だった十五歳の忍へ手を差しのべてくれた光流のことを思うと、彼のような人間こそが真っ先に救われるべきなのにと、やりきれない気持ちになる。

 やはり、自分のように利己主義で人情の機微に疎い者を選んでしまったことが、彼にとって最大の失敗だったのではないだろうか。光流に救われた自分は彼を救えずにいるどころか、彼を大切にしたいと願いながら平然と嘘を重ね続けているのだ。気は進まずにしていることとはいえ、今日だってそうだ。

「どうかしたのか?」

 忍は自責の念にかられながら訊ねてみたが、光流は黙ってゆるりと首を振るだけだ。力無くのばされた腕の心もとなさと不安の影に揺れている瞳を前にする度、忍の惑いや葛藤も嘘も、既に光流は感づいているのではないかという気がする。けれども、いくら問うてみたところで光流は何も言わずに、忍を求めてくるだけだ。いつも、いつも。

 こうなると忍は、光流に請われるまま彼を抱きしめることしか出来ない。こわれものを扱うように均整のとれた体をそっと胸に抱いて、柔らかな髪を指で梳きながら、額へ軽く唇をおとした。すると光流は、忍の肩口に凭れるようにして、徐々に体重をかけてくる。泣き出すのを堪えているように熱く荒い呼吸を喉元に感じつつ、されるままにしていると、やがてはバランスを崩して光流を支えきれなくなった。

 光流を抱いたまま、とすん、とベッドに倒れこむと、首筋から胸元、脇腹へと、既に身体に馴染んでしまった指の感触がスーツ越しに彷徨っている。忍は、あやす様に光流の背中を二度三度と軽く叩くことで、好きなようにすればよいと伝えた。すると光流は、ぴくりと全身を強張らせて動きを止めたが、やがて、ゆらりと緩慢な動作で起き上がって膝立ちになり、同時に忍の手首を引っ張って上体を起こさせた。

「なあ忍。――おまえがひたすらに優しく接してくるようになったのは、おれに対する負い目からなのか?」

 伏し目がちに問うてくる光流は、慣れた手つきで忍の上着を脱がせ、ネクタイをほどいていく。忍は咄嗟に首を振ったが、それは光流の行為にではなく、言葉に対してのものだった。耐えている彼の胸中を薄々察していたというのに、いざ正面をきって問い質されてしまうと、無難にかわすことが出来なかったのだ。

(そうか、やはり……)

 全て分っていたのだと、忍は深く納得をしながら「お前の嘘なんて最初から気付いていた」と、淡々と言葉を紡ぐ唇から目が離せなくなっていた。

 いや、意識的に他を見なかったのだ。今この瞬間に光流がどのような顔で忍を見ているのか、それだけは知りたくなかった。単に怒りを表されるだけなら、いくらでも耐えられる。でも、軽蔑しきった顔や愛情の冷め切った目を向けられたなら、耐えられないことだろう。相応に酷いことをしてきた自覚はあっても、いまや忍にとって、光流に見限られることは世界が終焉を迎えるのにも等しかったからだ。

「なぁ。ずっと隠し続けて、そのうちどこかのお嬢さんと結婚する気だったのか?ここを……、出ていくつもりでいたのか?」

 重ねて問われたことで動揺している心が現実に引き戻されたが、いつの間にかシャツの襟元も前も大きくはだけられており、ほぼ上半身を晒した格好で仰向けにされていた。更には、痛いほどにネクタイで手首を束ねられて、頭上に固定されてもいる。

 このような抱かれ方など、一度もされたことがない。忍は屈辱的なことをされていると感じつつも、光流にここまでさせるほど追い詰めてしまったことへの罪悪感や重大さのほうが気にかかり、酷く狼狽えた。そして、著しく冷静さを欠いている自分自身に驚愕するほど、混乱をきたしていた。どういうつもりでいるのかと答えを促す光流の声がやたらと遠くに聞こえはするが、忍にはもう、長く思い悩んできたことを打ち明けて、結果的に光流を裏切り続けたことを詫びる余裕が無かった。

「そんな顔をされると、こっちも辛いんだぜ。でも、言葉にしてくれないとどうにも治まらないことだってあるだろう?おれはそこまで出来た人間じゃないからさ」

 異常な行為とは裏腹にやさしい響きを帯びた光流の声に一層、不穏なものを感じる。だから忍は、両目を固く瞑ったまま、ちいさく首を振ることしか出来なかった。我ながら子供じみたことをしていると情けなく思う自分が意識の片隅に残ってはいるが、やはり光流の様子を確認する気にはなれず、精一杯顔を背けて息を殺した。

 すると、光流はくすりと笑った。忍の反応が滑稽に映ったのだろう。いたたまれない思いで身体を捩ると、彼は長い指で忍のこめかみから頬にかけてのラインをつうっとなぞり、ゆっくりと顎先を掴む。そうして、静かにではあるが強引に忍を上向かせた。

「どうしたんだよ、らしくないじゃないか。忍、――もしかしてこわいの?おれの顔が見られないくらいに?」

 目を閉じたままであるから、光流の表情はわからない。でも、「おれにまかせるって誘ってくれたのは、忍だった筈だけどな」という陶然とした声音からは、このまま解放してもらえないことだけは察せられる。

「……や……、嫌……だ」

 かろうじてそれだけを告げると、ふいに、鋭い痛みを左肩に感じた。忍は、ひっと悲鳴を上げながら、光流に噛みつかれたことを理解した。衝撃により見開いてしまった目でおそるおそる肩口を見やると、焼印のように歯型が浮いている。反射的に逃げようと足をばたつかせると、光流はあっさりと忍の動きを封じながらふふっと笑った。

「ああもう、今日の忍は可愛過ぎるなあ。震えちゃったりしてさ。おれをこわがる必要なんて、何もないのに」

 光流は楽しげに言いながら、自分のネクタイをするりと外した。そして、忍が拒否する間も与えないほどに素早く、目元から後頭部へとネクタイを巻きつけ、視界を覆ってしまった。

「光流!いやだ……っ」

 強制的に光を奪われたことと、これまで見たこともなかった光流の言動とに、急激に恐怖感が強まった忍は拒絶の意を表して暴れたが、両手を縛められていては光流を相手にどうこう出来る筈もなく、簡単に四肢を抑え込まれた。

「嫌、じゃないだろう?見えないほうがよさそうだったから、縛ってやったんだぜ。それに、直ぐに好くなって堪らなくなる。だって忍は―――、」

 おれが、そういう躯につくり上げたんだから。

 耳元の囁きに馬鹿なことを言うなと反論する間もなく、容赦なく覆いかぶさってきた光流が露わになっていた忍の肌をまさぐり始めたから、忍は自由の利かない体で抵抗を試みた。しかしそれは何の役にも立たず、却って光流を悦ばせただけのようであった。彼は「それ、わざとやっているわけ?」と嬉しそうに訊いてきたが、かといって忍の返事を待つわけでもなく、おもむろに平らな胸の飾りを捻り上げると、痛いと声を上げかけた忍へむしゃぶりつくような口づけをし、歯列を割って舌を滑り込ませてきた。そして、湿気を帯びた生温い熱で咥内を蹂躙し、嬲り続けた。

「や、……」

 玩具のように身体を弄ばれる感覚は、忍の精神に嫌悪感と苦痛とを与えた。それなのに、何ということだろう。拘束された手首や遮られた視界は、知らぬうちに忍の隅々を過敏にさせていくようだった。執拗な愛撫と接吻を繰り返されているうちに、忙しなくなった呼吸は甘く乱れて吐息混じりになり、光流の手指の動きに合わせるように背中が跳ね上がって、触れられもしない爪先までがびくびくと引き攣り、動いた。

 目を閉じていようと開いていようと真っ暗な闇の中で感じられるのは、忍の上で蠢いている光流の体温と手、舌と髪の感触。そして、自分たちの動物じみた息遣いだけだ。それらのみが忍にとっての全てとなっている異様な状況の中、明らかに快楽を認識し始めた身体についていけないのか、頭の中は霞がかかったように朦朧としており、自分のものなのか光流のものなのかも判らない唾液が口の端から溢れ出て顎や喉を濡らしていくのが、他人事のように感じられた。

「っふ、あ……」

 それでも、思わず漏れた甘ったるい声を自分のものだと認めたくなくて、忍はきつく唇を噛んだ。すると、光流は直ぐに啄むようなキスでもって、忍の口を半開きにさせる。

「そんなに噛んだら唇が切れて、綺麗な顔が台無しになっちまうぞ?」

 耳朶を甘噛みしながら、光流はくつくつと喉を鳴らす。そうして、先程までの獣のような強引さは微塵も感じさせない丁寧さでもって、やさしいだけのキスを忍の瞼や頬、首筋から鎖骨へと滑らせていく。安心ともどかしさとを感じさせる唇の感触は徐々に下方へと移ろっていき、尖らせた舌の先で臍を舐められる頃には腰や腿も撫で上げられていたが、一方的なペースで弄られて煽られ続けた忍の身体は弛緩しきっており、下腹部にじわじわと熱が集まるのを感じながら、痙攣するように全身を震わすことしか出来なくなっていた。

「ほら、やっぱり好きなんだよ。いつもより反応が良いし」

 突然に強いられた行為と、忍自身の心を裏切って光流の意のままに昂っていく身体。これだけで既に自尊心が砕け散ってしまいそうな惨めさを味わっていたが、光流は追い打ちをかけるようなことをさらりと言いながら、忍の下肢を剥き出しにしていく。忍は、これ以上の辱めは御免だと、力の入らない脚をどうにか動かして逆らってみたが大して意味をなさず、剥ぎ取られた衣服がパサリと床に落ちる音が忍を絶望的な気分にさせた。

 だが、今の光流にとって、忍の意思などはどうでもよいことなのだろう。光流は人形を組み立てるように忍の両脚を動かして位置を定めると、左右に大きく割り開いた。

「足、閉じるなよ。閉じたらもっと縛るだけだから」

「――――――!」

 まるで、爽やかに挨拶を交わすようにして、惨いことを言う。数えきれないほど肌を合わせてきた相手だというのに、あられもない姿で目隠しをされて手首を縛められた自分と、着衣を乱してすらいない筈の光流とを想像しただけで、極度の羞恥心によって涙腺が緩んできた。もう止めてくれと言いたかったが、声を発すれば情けなさのあまりに嗚咽をもらしてしまいそうで、結局は言葉にならない小さな呻きだけが、乱れた息とともに吐き出されていく。

「っう―――」

 耐えられない。と、忍は思った。見えていないのに、感じる。分ってしまう。すこし離れた場所へ移動した光流の、揶揄するようでいながら情欲の滲んだ熱っぽい視線が、忍の粟立った肌の上をどのように動き、どのように姦しているのかを。

「へぇ……、見られるだけで随分と濡れてくるものなんだな。おまえって身体だけは素直で、嘘をつくことを知らないよな。まあ、可愛いからいいけどさ」

 でも、もう少し我慢することも覚えたほうがいいかな。

 愉しくて仕方のないといった呟きとともに光流が戻ってくる気配がして、頭を撫でるようにしながら目元のネクタイを解かれた。同時に、穏やかな光流の微笑みが眼前に現れて安堵しかけた忍であったが、再び嫌悪感と恥ずかしさに身体を震わすことになった。光流はさも当然だといった面持ちで、忍の脚の間で頭をもたげているそれへ、ネクタイを巻きつけだしたのである。

「ど……して、」

「さっき言っただろう?我慢も覚えたほうがいいって。忍は全部が綺麗すぎるから、どんなに汚しても汚し切れない。もっと俺に食べられてぼろぼろになったくらいが、生き易くなれて、丁度良いんだよ」

 光流は、忍にはさっぱり理解の出来ないことを言いながら、痛みはしないが締め付け自体が刺激になる程度にはきつく、縛りあげてしまった。すると、出口を失ったと悟った途端に、集まった熱が沸点に達しそうになる。忍は、認めたくもなかった自分の浅ましさを振り払うように左右へ大きく頭を振り、頼むから解いてくれと、切れ切れの声で懇願したが、光流は「ああ、好い顔になった」と、涙が滲んだ忍の目元に口付け、内腿に手を這わせながら微笑むだけであった。

 

 大きく開かされた脚の間で、細く長い布地の先端が揺れている。

 でもそれは、局部を縛められているのに透明な液体で濡れていくばかりの股を覗き込んでくる光流が「我慢しないと駄目だって言っただろう?」と言って、くすくすと肩を震わせているからなのか、解放を望む身体がもっと強い刺激を与えてくれと、勝手に腰を揺らして光流にねだっているからなのか、最早忍には判断がつかなくなっていた。

 下腹に溜まるだけの卑しい情動は澱みきり、激しい疼きとなって忍を苛む。だが、荒ぶる熱に浮かされるまま悲鳴まじりの嬌声を上げたところで、光流は忍を抱く気はない様子である。ここに至っても服を身に着けたまま、体裁もなにも無く身体をくねらせて喘ぐ忍を愛おしげに眺めはするものの、手慰み程度に触れるだけで、それ以上の行為に及ぼうとしない。それでいながら、「おまえって本当に、最高。骨も肉もしゃぶり尽くして食べてしまいたいくらいだよ」などと言う。既に熱を吐き出すことばかりに意識が向いている忍は、「だったら何故」と思いながら、啜り泣いた。

 しかし、泣きながら忍はふと、これは罰なのだと思った。忍の世界で中心に位置する存在を裏切り続けたことに対する報いなのだと。

 ならば、今こうやって罰されている自分は、その、かけがえのない存在である光流に、どうすれば赦してもらえるのだろうか。

 平静を失っていながらも忍は懸命に考えたが、いつまでも満たされない身体が飢えに耐えきれず、もがき出した。開き過ぎて痛くなった脚の間で、布を巻きつけられた熱が固くなり、猛っている。

「光流――、」

 どうすれば良い?

 どうすれば、ゆるしてもらえる?以前のように愛してもらえる?

 この、ひとりでは鎮められない疼きを、どうすれば――…

「みつるっ……!」

 何ひとつ答えの見つからないままに、忍は淫らに喘ぎながら、神にも等しい者の名を呼んだ。そして、忍そのものが彼に対する供物であるかのように、慈しみの視線が注がれる中で縛められた躯を自ら卑猥にくねらせて、忍だけの孤独で寂しい神を誘うために腰を揺すり続けた。